「最近読んだ本で、何かおすすめある?」
就活の面接や、尊敬する先輩との何気ない会話でこう聞かれたとき、私はフリーズしてしまいました。
その時、私が読んでいたのは稲盛和夫氏の『生き方』。ビジネスの原理原則が詰まった名著であり、私自身、心に響く言葉をノートにびっしりとメモしていました。「自分は深く理解している」という自負さえあったんです。
なのに、いざ口を開こうとすると、「あ、えっと……すごく、熱量があって、正しい生き方を説いている良い本でした」 という、中身ゼロの感想しか出てこない。
「具体的にどのあたりが?」と深掘りされ、冷や汗をかきながら「……全体的に……」と誤魔化したあの情けなさは、今でも忘れられません。
本を読んでも、内容を忘れてしまう。自分の言葉として、外に出てこない。
それは、私の記憶力が悪いからではありませんでした。脳内への「保存形式」が、他人に出せる形になっていなかっただけなのです。
今回は、私が「悔しさ」をバネに研究し、現在進行形で実践している「血肉化する読書術」のすべてを共有します。
この記事で得られること
- 読んだ本の内容を「自分の言葉」で言語化する技術
- 「わかったつもり」を排除する脳のトレーニング法
- 著者の主張を構造で捉えるための4項目テンプレート
- ビジネスの現場で「デキる」と思われる説明の型
記事の構成
1.【現状分析】なぜ私の言葉は「すらすら」出てこなかったのか
これまでの私は、ただ一生懸命にページをめくっているだけの「情報コレクター」でした。 なぜ言葉が出てこないのか、その構造的な原因を3つの視点から分析しました。
① 自分の「好き」だけを拾う「宝探し」モード
以前の私は、自分が感動した断片(名言)だけをメモして満足していました。
これを料理に例えると、「スパイス」だけを大量にポケットに入れている状態です。肝心の「メインディッシュ(本の結論や論理構成)」を忘れているので、人には何も振る舞えません。
「いい言葉だな」という点(ドット)はあっても、それをつなぐ線(文脈)がないから、話が繋がらないのです。点だけを並べても、相手には「結局、何の話?」と思われてしまいます。
② 「再認」と「再生」の巨大なギャップ
ここが、多くの人が陥る最大の落とし穴です。
- 再認: 読みながら「なるほど、わかる」と思うこと。
- 再生: 本を閉じ、何も見ずに内容をゼロから語れること。
読んで理解できること(再認)と、自分の言葉で語れること(再生)は、脳の使い方が全く別物です。
私は「読んでわかった」ことで満足し、最も脳に負荷がかかる「再生」のプロセスを完全に無視していました。テスト勉強でいえば、教科書を眺めているだけで、問題を解く練習をしていない状態だったのです。
③ 「誰かに話す」という出口の設定漏れ
常に「自分のために」メモを取っていました。
出口が決まっていない情報は、脳にとって「とりあえず置いてあるだけの在庫」です。「就活の後輩に教える」「ブログで紹介する」「あの課題を抱えている上司に提案する」といった明確な宛先がないと、脳は情報を整理せず、すぐにゴミ箱へ放り込んでしまいます。
脳は「いつ、誰に使うか」が明確な情報だけを、検索しやすい引き出しに保管してくれるのです。
2. 【実践】私が変えた「人に届ける」ための読み方
「いい本だった」という自己満足で終わらせないために、私が取り入れた具体的なルールの変化です。
著者の「思考の骨組み」を抜き出す
心に響くフレーズを探す前に、まずは著者の「設計図」を写し取る意識を持ちました。
- どのような「課題(Issue)」に対して
- 著者はどういう「アプローチ(思考プロセス)」を取り
- 結論として「何(Message)」を言いたいのか
これは、私が大学で学んでいる建築の設計プロセスと同じです。外壁の装飾(美しい名言)を見る前に、まずは建物を支える柱と梁(構造)を確認する。この「骨組み」を最優先で捉えるようにしてから、説明の「型」が自分の中に自然と出来上がりました。
「自分の体験」と「周囲の人」に紐付ける
知識を抽象的なままで終わらせず、自分の日常に強引に引き寄せてみます。
「あの時、サークルで失敗した原因はこの本の通りだ」
「今の自分のブログの課題は、この理論で解決できるかもしれない」
自分の過去の体験や、現在抱えている問題とセットになった知識は、ただの「データ」から「エピソード」に昇華されます。エピソード記憶は、単なる暗記よりも遥かに強力に脳に定着し、会話の際にも「自分の言葉」として自然に出てきやすくなります。
脳を「出力モード」に強制固定する
読み始める前に、スマホのメモ帳や付箋に「今回の読書の目的」を書きます。「〇〇さんに、この本の価値を3分で伝えるための材料を探す」
この制約があるだけで、読書のスピードと情報の吸収率は劇的に変わります。受け身の「読者」ではなく、情報を編集する「発信者」の視点で本に向き合うのです。
3. 脳内に「台本」を作る4項目フォーマット
私が実践して最も効果があった、メモの質を劇的に変える4つの項目です。正直に言うと、この整理には少し時間がかかります。最初は1冊につき30分以上かかるかもしれません。まさに「脳が汗をかく」作業です。
しかし、この負荷こそが、知識を武器に変える唯一の手段です。
① 誰におすすめ?(Target)
ターゲットを一人、具体的に絞り込みます。「就活を始めたばかりで、自分の武器が見つからず焦っている後輩のA君」
ここまで絞ることで、本の中から「A君に伝えるべき要素」が浮き彫りになり、脳が情報を「使う知識」として再分類し始めます。
② 一言でいうと?(Summary)
その本の核を、SNSの1投稿(140文字)程度で要約します。ここが一番難しいところです。多くの情報を捨て、残ったエッセンスだけで「要するに何なのか」を定義する。この「定義する力」こそが、言語化能力の正体です。
③ 3つのポイント(Logic)
バラバラだった「いい言葉」を、結論を支える3つの理由に構造化します。「なぜ、この本がおすすめなのか」という理由を3点(1.背景、2.解決策、3.効果)で整理する。この「3」という数字は、人間が一度に理解しやすい魔法の数字です。
④ My Action(Experience)
知識を「知っている」で終わらせず、「明日からこれをやる」という行動に変換します。私はこの実践の場として、ブログで書評記事を書くようにしています。
「書くこと」を前提に読むと、読書の解像度は10倍以上になります。ブログは、自分自身の理解を深めるための最高の「アウトプット装置」なのです。
4. 【実証】この読み方を始めてからの変化
正直に言うと、私もまだこの読み方を完全にマスターしたわけではありません。今も、分厚いビジネス書を前にして「全然言語化できない……」と頭を抱える日もあります。
しかし、継続することで確実に変化が現れています。
言葉に「迷い」がなくなる
以前は「……だった気がする」という曖昧な話し方でしたが、今は「この本の結論は〇〇で、理由は3つあります」と、構造的に話せるようになりました。この変化は、特に面接やインターンの現場で大きな信頼に繋がっています。
「読み直す」必要がなくなる
一度「再生」の負荷をかけた本は、1ヶ月経っても骨組みが脳に残っています。何度も読み直す「時間の浪費」がなくなり、結果として読書の効率が上がりました。
「わからない」ことがわかる
エア説明をしていて言葉に詰まったとき、そこが自分の「理解の弱点」だと即座に気づけます。弱点がわかれば、そこを重点的に補強するだけ。「何がわからないのか、わからない」という不安が消えました。
5. まとめ:読書は「外に出すまで」が読書である
以前の私は「読み終えること」がゴールでした。でも今は、「誰かに話せる状態になること」をゴールに置いています。
10冊をただ流し読みして忘れるより、1冊を「誰かに届けられるレベル」まで深く理解し、自分の血肉にする。その積み重ねが、ビジネスの現場や面接で、相手を納得させる「言葉の重み」に変わります。
もし、あなたも「本の内容をすぐ忘れてしまう」と悩んでいるなら。まずは本を閉じた直後、スマホを置いて、誰もいない部屋で「この本はね……」と3分間話し始めてみてください。
その「脳の汗」が、あなたの未来を切り拓く最強の武器になるはずです。
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